ザ・タウン
(2010年/アメリカ)

 俳優のベン・アフレックの監督第二作目だ。とはいっても、第一作目は観ていないし、そもそも自分はベン・アフレックのことを忘れていたのだった。彼と幼馴染みのマット・デイモンとの共同脚本(アカデミー脚本賞受賞)による「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」と「アルマゲドン」「パール・ハーバー」ぐらいしか観たことがなかった。そう、いつのまにか自分はマット・デイモンのファンになっていた。彼のほうが予想外の人気俳優になり、その公開作のほとんどを観ていた。そうこうしているうちに、年月が経ち、ベン・アフレックの存在を忘れてしまっていたのだった。
 ところが、人生とはわからないものだ。ある日、友人の馴染みの喫茶店に入ったとき、平積みになったミニシアター「蠍座」のリーフレットを見つけた。どんな映画がかかっているのかな、と目を通していたらと、支配人が書いた「ザ・タウン」の紹介文にぶち当たった。気に入った。特に最後の一行「ベン・アフレックというゴリラ、ただのボンクラとはモノがちがう」。俄然、ベン・アフレックの監督主演作品に興味を持ったというわけだ。ちなみに、リーフレットは支配人が作成しているが、彼の視点と文体が好きだ。紋切り型ではない。媚びていない。毎号、コラムも書いているが、これが歯に衣着せぬ表現で痛快極まりない。直球を投げてくるので、こちらもそのテーマについてじっくり考えてみようという気になってくるのだ。

 長い前置きになってしまった。 『ザ・タウン』の舞台となるのは、ボストンのチャールズ・タウンという小さな一画。そこは世界のどの一画よりも銀行強盗や現金輸送強盗が多い場所だという。その街に生まれた主人公(ベン・アフレック)は、プロ・ホッケー選手の夢をあきらめ、いつのまにか強盗団のリーダーとして、完全犯罪に命を張っているのだが、常にこの街を出て行きたいと思っているような男だ。これが最後と決めて、銀行強盗を実行しようとするのだが......。
 映画冒頭の銀行襲撃シーンからラストのスタジアムでのクライマックスまでを走り抜けるアクション描写が意外なほど力強い。白昼堂々の強盗(鮮やかな手口!)が展開されるので、陽光きらめくシーンにリアリティがある。そして、ときどきカメラは街を俯瞰し、それが切なくも美しい。犯罪映画なのだけれど、エモーショナルではない。どこかクールであり、爽快感がある。
 ラストでレイ・ラモンターニュが歌う「ジョリーン」という曲が流れるが、これが実にいいのだ。余韻を残す粋なラストシーンにマッチしていた。

 ベン・アフレックはキャスティングのセンスもいい。渋い個性派を揃えた。「ハート・ロッカー」で爆弾処理班のリーダーを演じたジェレミー・レナーほか、クリス・クーパー、そして、ピート・ポスルスウェイト。彼は2011年の1月2日に64歳で亡くなったが、これが遺作。かなり、やせていたけれど、凄みのある演技だった。ベン・アフレックと恋に落ちる人質女性(銀行の支店長)を演じたレベッカ・ホールという女優も知的な雰囲気があっていい。  そんなわけで、ベン・アフレックの手腕にびっくりしたのだった。

 ボストンといえば、ロバート・B・パーカーのスペンサーシリーズを思い出す。昔、「スペンサーのボストン」という本を買ったことがある。パーカーの来日記念として出版されたもので、熊谷嘉尚さんが撮影したボストンの四季折々の写真がとてもよかった。

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