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 若いころは、その1冊を最後まで読み切ってからでないと、次の本には進めなかった。途中、どんなに退屈しても、また、そっちのほうを先に読みたいという誘惑にかられても、最後まで読みたかった。一度手にした本に対する礼儀だと思っていたわけではないが、読み切ってしまわないと、なんだか食べ残すみたいで、気持ちが悪かったのだ。
 そんなこだわりが消えたのはいつのころだろうか。気がつけば、そっちもあっちもという具合に併読(並読?)をするようになり、それがたいして気にもならなくなってしまった。一人の作家にはまると続けて何冊も読む癖も昔ほどではなくなったかもしれない。また、近年は若いころに読んだ本を再読するようにもなった。夏目漱石や太宰治の作品は十代の終わりに読んだときよりも、余裕をもって読めるようになり、あらたな発見があったりもする。
 子どものころから本棚に並んでいた筑摩書房の現代日本文学全集と世界文学体系。どいうわけか、7、8年前から行場をなくして実家の納戸に積まれてしまっていた。 ドストエフスキーやトルストイ、スタンダール、ヘッセ、ジイドなどを初めて読んだのはその全集だったが、なにしろそれらは三段組で、文字のサイズは10Q、7ポイントくらいで、字間も行間も詰まっている。しかも、日本文学のほうは、旧仮名遣いのものもある。小中学生には読むのがつらく、父が「うちにある全集を読みなさい」と言っていたが、ときどき文庫を買って読んだものだった。当時の文庫もかなり文字が小さかったのだけれど。
 そんな全集に収まった『カラマーゾフの兄弟Ⅱ』の見返しの隅に、鉛筆で小さく昭和46年3月と記してある。わたしは高校卒業記念にじっくり読んだことを思い出す。
「自分の読書の原型は20歳までにあり」。最近気がついたことである。納戸に眠る全集を再読も含めて読んでみたくなった。
 ここでは、新旧にかかわらず、本の感想や作家にまつわることなどをつれづれに書いていきたい。

    (10)色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上春樹 new

    (9)abさんご/黒田夏子

    (8)55歳からのハローライフ/村上龍

    (7)ことり/小川洋子

    (6)地層捜査/佐々木譲

    (5)警官の条件/佐々木譲

    (4)北海道室蘭市本町一丁目四十六番地/安田顕

    (3)空飛ぶタイヤ/池井戸潤

    (2)まほろ駅前多田便利軒&仏果を得ず/三浦しをん

    (1)心はあなたのもとに/村上龍

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