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発言番号27
名 前keity
タイトルDVD「少年は残酷な弓を射る」を観る。
コメント劇場で観た「ビューティフル・デイ」の監督リン・ラムジーの前作が気になり、DVDを観てみた。

冒頭、スペインのトマト祭り、トマティーナの様子が映し出される。つぶれたぐしゃぐしゃなトマトを浴びた人たちは男も女も真っ赤か。徐々にカメラは仰向けになって全身真っ赤に染まる女の姿に寄って、満足げな恍惚とした表情をとらえる。思わせぶりなこの長回しのシーンだけで、物語の特異性を感じてしまう。
シーンが変わり、赤いペンキをかけられたような家の外壁や車、それらを拭き取ろうとする憔悴しきった中年の女の姿。そして彼女が町に出かけると、いきなり通りがかりの女から平手打ちされ、スーパーに行けば、冷たい視線を浴びせられる。容赦ない描写が怖い。複雑な事情がありそうだ。それを一つ一つ、解明してくれるのをこちらは覚悟を決めて注視するしかない。
原題は「We Need to Talk About Kevin」。ケヴィンとその母親との確執がどのようにして生まれ、いびつな関係が修復されないまま現在に至ったかを、母親の視点で描かれていく。赤ん坊のころから母親にはなつかず、成長するごとに嫌がらせも増長していくケヴィンと母親とのやりとりは息苦しいほどで、ワンシーンが終わるたびに深呼吸が必要なほどだった(苦笑)。
母親を演じたティルダ・スウィントンは渾身の演技で、代表作だろうと思う。とはいっても「カラヴァッジオ」と「オルランド」「ベンジャミン・バトン」ぐらいしか観ていないのだが。息子役のエズラ・ミラー、残酷だけれど美しく、突き刺すような冷たい視線が怖いのだ。

「ビューティフル・デイ」との共通点は多い。傷を負った人間の現在と過去の時間を行き来する手法、直接的な残酷なシーンはないのに恐怖を映し出す演出、独特なカメラワークによる鮮烈な映像、そして、音楽担当がジョニー・グリーンウッドであることなど。ただし、音楽はシーンと微妙にズレているのが特徴で、緊迫するシーンでバディ・ホリーの「エブリデイ」をはじめ、カントリー調のポップな曲が流れて不気味だし、CAN(多分)の曲や三味線の音色やノイズも流れて神経を逆なでされてしまう。そのあたり、ひねりがあって、面白い。

「ビューティフル・デイ」同様、全編にわたり引き込まれる作品だった。この手の映画は劇場で観るにかぎる。
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